★アメリカの鍼灸事情★

名前 = S.K
性別 = 男性
age = 30to39
メッセージ =
東洋医学に興味があるので時々訪問させていただいてます。
先日読んだ朝日新聞発行の雑誌のトピック欄にアメリカで最近鍼灸が飛躍的に盛んになったという内容の記事が出ていました。
全体の医療費の25%とかも書いてあってちょっとビックリしました。
科学の最先端アメリカでどうして鍼灸なのかお分かりの範囲で良いですから教えて下さい
別に返事は急ぎませんから。



M.T様へ

昨年のアメリカの全医療費の25%を鍼灸、やアーユルベーダが占めたという報道ですね。
数年前のデータでは代替医療費が全医療費の35%と知ってましたのでそれ程には驚きませんでしたが、この様な事実を一体どれだけの日本人が知っているでしょうね?
実は日本では鍼灸医療費は全医療費の3%にも及びません。
日本人にとって東洋医学はむしろ漢方薬の方がイメージしやすいかも知れませんが、アメリカも含めた西洋諸国においては、鍼灸こそ東洋医学のエッセンスと認識しています。

(漢方薬は今のところは「チャイニーズ.ハーブ」と総称されて西洋のハーブと区別される程度に留まっていますね。将来的にはこちらの方も強烈なスポットライトが当たるはずですが。)

以前よりアメリカから社用などで来日された方々がアメリカで続けていた鍼灸治療を受けようと周りの日本人に腕の良い鍼灸師を尋ねても治療経験者が少なくてまともな情報が得られないことに驚いておられます。
中国に次いで日本も鍼灸の第二の本場みたいに思っていて、歴史の古さからも国民のほとんどが経験者だと信じ込んでいたらしいのです。
本当はアメリカの方が(特に都会では)鍼灸経験者の比率は日本の何倍も高いのです。

※アメリカに限らずヨーロッパ各国の人達の「医薬品に頼る治療は出来るだけ最後に回そう」という意識は、近年とみに顕著になり、どのアンケート調査などを見ても対象者の9割を越えています。
イギリスではチャールズ皇太子が鍼灸治療を好み先頭に立って鍼灸などの代替医療の普及を支援する団体に資金を提供し後援者となっています。

そして実は28年前、私の所へロンドン市内の社会福祉病院から、病院の性格上高給は支払えないが治療態勢の充実などには全面的に協力するので是非にも渡英願いたいとのお手紙を頂きました。
それ以前に来日された鍼灸研究者であるフランス人医師の通訳をさせて頂いた関係からのお誘いでしたが、遠い異国の病院で自分一人での一からの鍼灸体制作りは若輩者には余りにも重荷で直ちに断ってしまいました。あの時イギリスに渡っていたら私はどうなっていたのだろうと、後でちょっと後悔したものでした。
今から思えばイギリスではその当時から遠い外国からでも鍼灸師を呼び寄せようと発想する位に鍼灸に対する期待感があったのですね。
過去にそんな事がありましたので28年後の現在にイギリス皇太子が鍼灸の後援者になるのも私の中では納得です。
横道にそれてしまってすみません。
話を戻します。
アメリカで(正確には西洋各国でといって過言でない感じですが)鍼灸が加速度的に普及している主な理由を以下に示します。

@鍼灸で病気を治すと安く済む。(保険会社の思惑)

アメリカでは公的医療保険がありません。ですから国民は各自任意の医療保険会社の保険に加入します。
当然その保険会社は私企業ですから儲けを出す為に、どの様な治療を受けると最も安く速く治るかを各病気ごとに詳しくチェックしています。
医療費の支払額をいかに減らすかが保険会社の生命線だから彼らも必死です。
その結果、鍼灸が多くの病気で高価な医薬品を使わず、短期間で治る、従って支払額を減らす為にふさわしい治療法との選択がなされました。

(実際 一般の開業医の扱う加齢による障害や生活習慣病等々ごく普通の病気は、その大半が自然治癒力を利用した鍼灸医学の方が効率よく治ります。)

A薬害への不安(患者側の思惑)

薬を使わず「出来るだけナチュラルに自分自身の自然治癒力で病気を治そう」という意識は、生命科学の発展に伴って先進国ほど強く成って来ています。

かつての自然治癒力を過小評価していた科学万能の時代は終わったというべきなのでしょうね。
21世紀はこの我々誰もが生まれながらにして持つ自然治癒力を如何にして望む方向に引き出し操るかが一般医療の哲学的根幹となるはずです。

この生命に対する意識の変化に、薬という名の異物を体内に一切入れないで自分自身の生命力を最大限に利用して病気を治そうとする鍼灸医学が正に、はまったのです。
つまり患者達の薬害からの解放への希求感と、ここ10年程で新たな展開を繰り広げている生命科学の将来への一抹の不安もあるのでしょうか。
ですから、一応は飲んでお腹に入れる漢方薬ではなく内臓に何も入れない治療法の鍼灸がむしろ選択されるに至った理由も解りますよね。
例えば一国の経済が疲弊した場合でも外資(医薬品)の投入を第一にするよりも、国民の自助努力(自然治癒力)による経済回復手段がまず最初に選択されるべきなのは当然でしょう?
そして外からの資力(医薬品)を先に投入した後で自助努力(自然治癒力)を盛り上げることの困難さも自明の事ですね。
まず最初に鍼灸治療の選択を勧める保険会社からのオファーにも説得力があるはずです。

B医療過誤による訴訟に対する医師の危機感(治療現場の医師の思惑)

アメリカが訴訟社会と言われて久しく成っています。
多くの最も有能な人材が人間同士のトラブルを飯のタネにする、非生産的職業に就くという、大いなる人材の無駄遣いが産んだアメリカの悲喜劇は法廷闘争を丸でクリエイティブな発想のコンペティション化してしまい一般人の頭を混乱させる判決を次々と輩出しています。
医療トラブルの賠償金も世界一有能な(?)アメリカの弁護士達の大活躍のお陰で、年々うなぎ登りです。

日本でも医師を始め鍼灸師も、医療過誤によるトラブルの際の保険に加入していますが、この保険料が当然アメリカでは年々高騰し医師の経費を圧迫しています。

(ちなみに重篤な結果に至るお産のトラブルを想定した産婦人科医の保険料が一番高い)

近年はトラブルを恐れて医師の治療活動を消極的にし、医師希望者を減らす風潮とまでなっていると言う人もいます。
ところが、鍼灸はハリを刺したり、灸で燃やしたりで一見いかにも野蛮に見える治療法ですが医療過誤のトラブルは、まず有りません。
数千年も前から、鍼灸医学は不衛生な環境でもトラブルもなく消毒を必要とせず発達してきた、長い歴史が証明した”LOW RISK HIGH RETURN” な治療法なのです。
日本でもかつてはGHQが野蛮&非科学的で効果のない手技という認識で禁止を画策しましたが、医療トラブルが現実に起こっていないという理由で盲人の生活手段としての存続を容認した歴史があります。
医療トラブルで訴えられる可能性の低い治療法を模索していたアメリカの医師に又この鍼灸がはまったのです。
その結果鍼灸を学ぶ医師が現在急速に増えています。
だいたい以上が昨年のアメリカの全医療費の25%が鍼灸などが占めた主な理由と思われます。
要するに保険会社、患者、そして医師側と三者が珍しく利害が一致したので急速に進んだということですね。
(これによって困るのは製薬会社と弁護士ですね)

ですがこれらの事情は決してアメリカに限らないはずです
勿論そのままは当てはめられませんが、
日本でもなるべくなら副作用の心配のある医薬品に頼らないで病気を治す事が実は今一番求められています。
(健康、医療情報のTV番組や雑誌の氾濫がそれを証明しています。)

しかし実際の日本では検査に明け暮れ、高価な医薬品を使う治療が保険によって医療現場では国民が最も安価で受けられる仕組みとなっています。
その結果、医療費を支払う自治体や保険団体は赤字が雪だるま式に膨らむ、そしてその赤字のツケを国民が再負担するという日本の保険医療行政の矛盾を、今こそ本気で声を上げ問題化すべき時ではないでしょうか。

急速に高齢化が進む日本の将来の医療を考えると、現在でも鍼灸や代替医療を支える患者さんの大半が高齢者で有ることからもリスクの多い医薬品を使わないで速く治す代替医学の国家規模の研究とそれらの全面的な保険診療への転換など新たな医療体制への変革は長い目で見ると医療財政の健全化への大きな成果を産む改革であるはずだと、手前味噌を承知で思いっきり言わせて貰います。

もっともその為には我々鍼灸師の足元からの飛躍的なレベルアップの為の再トレーニングが必至であることは言うまでもありません。
しかしこれも又、我々への多大な期待とニーズがないと研鑽への責任感も生まれませんから、ニワトリが先か卵が先かという疑問に通じる部分も確かに存在し忸怩たるものがありますが、ここは国民の意識の変革をこそ発端としてスタートして世論から行政を動かして頂きたいと切に願っている今日この頃の私メでございます。..まるで選挙演説だ(笑)
将来の日本の医療革命へのサポートこそが、そもそもこのホームページを開説した動機ですので力が入って当然と何卒ご理解頂きたい。
とにかくそんな訳で(どんな訳で?)
メチャクチャくどい解説でオマケに個人的回想も押しつけて申し訳なかったけど(果たして全部読んでくれたかな?)
これに懲りず今後ともどうぞ宜しく。   ご静聴 有り難うございましたっ!

松岡佳余子

 

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