★”搶心”について★
> 名前 MIKE
>性別 = 男性
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>メッセージ =
>搶心という単語が古文によく出てきますが、インターネットで検索しても、具体的な症状がよくわかりません。これについて解説してある書物か何か、あるでしょうか?

IKE様へ
ツボ探険隊の松岡です。
早速ですが、ご質問の「搶心」(そうしん)ですが、古典を勉強した鍼灸師以外は余り使わない用語で、実際にはもっぱら薬方にて用いているのではと思われます。
「搶」は元々は「槍(ヤリ)」で「突く」という意味で在ったものが、金、元時代(日本で言えば平安時代)から後はこれに「奪う」と言う意味が加わった様です。
・・で肝心の「搶心」ですが、「心を突く」ですから「腹部の気が突き上がって心臓を強く圧している」という意味に成り、「気逆」の一つですね。患者さんからすると”胸下部に圧迫感、胸苦しさ”を感じる症状に成る訳です。
この症状ではお薬ではお腹の働きを安定させる処方が施されることになるのでしょうが、鍼灸ならばこの症状を取る治療は比較的簡単です。実際に「四診」にて診察しないと一概には言えませんが、背部の「輸穴」を始め「内関」や「足三里」のツボも良く効くはず。

「搶心」については私の手元にある古典医書の「寿世保元」(じゅせいほげん)に載っています。作者は明の時代(安土桃山〜江戸時代))の「きょう廷賢(ていけん)」「きょう」の漢字は「龍」の下に「共 」です。

※「寿世保元」の作者「きょう廷賢」( きょうていけん)について
中国の金谿(広西省)の出身の明時代の名医で1539年頃に生まれ1632年頃に没したとされています。代々の医家で彼の家系に伝わる薬方資料に廷賢が書き加え、『古今医鑑』という医書を最初に著しました。
幼少より科挙を目指して受験勉強していたそうですが合格出来ず、家業の医業を継いだのです。中国各地に留学した後に北京で大変に地位の高い御典医となり郷里に錦を飾ったそうです。
最初の『古今医鑑』に次いで『種杏仙方』『万病回春』『寿世保元』等8冊を著し、全て生存中に次々と刊行されたのは彼の医名が随分と高かったということでしょう。最も有名な彼の第3作目の『万病回春』は48才の1587年に脱稿し、翌年に金陵(南京)で出版されたもので現在まで版を重ねている名著です。 
日本でも江戸時代初期に入り、和刻版は江戸時代前期100年だけで中国を超えた30回近く出版されたそうです。当時の医師数は中国より遥かに少ないのですから、この時期の日本医学のベクトルは『万病回春』そのものといっても良い状況であったと想像されます。
 その後江戸も中期以降に成ると彼の書はまったく流行らなくなり、張仲景の『傷寒論』や『金匱要略』関連書が沢山出版され読まれるようになりました。この状況は現在にまで至っていますね。つまり日本の漢方医学はほぼ「張仲景医学」と言っても良い状況です。それでも「きょう廷賢」医学の影響もかなり残っていて、現在も使われている漢方製剤を出典分類をすると、彼の書を出典とする処方数は張仲景の『金匱要略』や『傷寒論』に次いで3番目だそうですよ。つまり医師としては「医聖」とも呼ばれた「張仲景」についで2番目ですから、日本漢方医学の根幹に大きな影響を与えた医師としては廷賢はNO’2のVIPになりますね。

実は私の知人に台湾に住む中国代々の医家出身の中医師が居ますが、やはり家系に伝わる貴重な薬方(家伝の秘薬)、家伝の病気治療法等々を多く持っています。
頭が良くなる薬(脳に特化して血行を促進する薬だと思います)、アトピーを始め皮膚病の特効薬、背が伸びる薬(成長ホルモンの分泌促進薬)、慢性関節リュウマチの痛みを取る貼り薬などなど大変に興味深い(?)薬も多く私も実際に購入し(約40万円分ほど買いました)試しましたが確かに効果があるようです。背が伸びる薬も現在私の友人(日本人)のお子さんが試していますが本当に凄く背が伸びてビックリしています。何人もの日本人がこの医師の薬を買う為に台湾に出掛けているそうです。
しかしこの医師は「きょう廷賢」のように医書として薬方を公開する事は一切していません。手先によるテクニックが大事な鍼灸と違い薬方は公開すれば簡単に模倣されますから工場で他人に委託して作らせる事が出来ないのでこの医師は自分自身で全て作っています。貼り薬の場合は調合したゲル状の薬まではご自分で作り、身体に貼るシート紙や布への塗布加工は工場に依頼している様です。
当然価格も非常に高いのですが現代医学の最先端でも他に同レベルの効果を持つ薬が今のところは有りませんから、どんなに高くても求める人が多く良く売れているようです。台湾でも地位の高いお金持ち限定御用達医師ですね。もちろん家伝の数々の秘薬のお陰でこの一家は大変裕福で欧米を始め日本にも年に何回も遊びに来たり非常に優雅な暮らしをしておられます。家伝の秘薬の処方を一般に公開したり、製薬会社に売らない限りはこの家系の人達は代々このような良い生活が将来も保証されるのでしょう。
つまり、代々の家系に伝わる薬方(秘薬)を名誉と引き換えに世の中に医書として公開することが如何に難しい事かとこの人を見ていると感じます。

実はこの医師の家系に伝わる薬で「PTSD」を治す良い薬《辛い事を忘れさせて前向きにする薬。一見「抗うつ剤」かのようですが、しかし西洋医学の「抗うつ剤」の持つ副作用は全く無く、頭がすっきり軽くなって爽快感が得られるそうです〜これを飲んだ人達の話)があるので是非とも患者さんにお奨めしたいのですが価格が高くて(1ヶ月分10万円位だそうです)簡単には勧められません。私自身この事がとても残念だと日頃から思っていますので、各名医家の家系の人達が伝承している処方を一般に公開する事の大切さを痛感しています。

※私は2年前にこの医師の所(台湾)へ見学と取材に行きました。
確かに名医なのですが、治療費や薬代が余りに高価ですからホームページに宣伝臭が漂うのを恐れて敢えて一切の紹介をしませんでした。食事等の接待、御土産も貰い多くの写真やビデオ撮影までさせて頂いたので、その後もご連絡は頂いていますが実は内心で怒っておられるかもしれません。
IKE様より

ご丁寧な返事、ありがとうございました。
 『寿世保元』ですか。自宅なので、あるかどうか判りませんが、無ければ手に入れねばなりませんね。『古今医鑑』と『万病回春』は持っているはずですが。
 去年から古典を読み始めましたが、古文は現代文と違って、なかなか大変です。病名とか症状名とか、辞書を引くことばかりで、なかなか進みません。質問しようにも、誰に尋ねたらよいか途方に暮れてました。いままで不勉強だったもので。 これからも初歩的な質問をすると思いますが、よろしくお願いします。

最後の家伝を一般に公開しないことについては、私も全く同感です。一般に公開して、大勢で追試したり検証したり、討論したりしないため、漢方や鍼灸は西洋医学に後れをとったのではないでしょうか?一般大衆の漢方や鍼灸に対する認識は、百年ほど前に始まったカイロプラティクや外気功と同レベルに見られているのではないかと思います。
 インターネットが一般公開の道を早めるのではと期待もしましたが、中国の鍼灸サイトに行っても、途中でパスワードが必要だったりしてブロックされ、あまり大した情報を得られず、かといって日本のヤフーで鍼灸と学術の検索をしても、鍼灸の学術的なホームページは見つからず、表題だけで内容が無く、あまり意味がないかなと思っていました。他のページで書き込みなどしたことが無いのですが、いまではホームページがあって良かったと思っています。 日本では、漢方や鍼灸の一般公開など、ありえるのでしょうか?でも、それをしないと人数的にも大陸にかなわないと思うのですが。

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